誰か一人を思い浮かべて「手紙」のように書くと、伝わる文章になる。
「文章を書くコツ」として、そんなふうに言われることがあります。
「文中では『みなさん』ではなく『あなた』と呼びかけると良いなんていうテクニックも、ここに由来するのでしょう。
そう。人間関係の基本は「わたし」と「あなた」。
それは、ブログやSNSを通じた関係でも同じです。「1」対「大勢」ではなく、「1」対「1」のつながりの積み重ねが、大きなアクセスや反響につながる。
そんな「当たり前」のことを思い出させてくれる、1冊の本がこちらです。
↓
あたしとあなた 谷川俊太郎 ナナロク社
日本を代表する詩人である谷川俊太郎の詩集は、37篇すべてが「あなた」と「わたし」しか登場しない、2人の物語となっています。
なぜ、谷川さんはこうした詩集を書こうと思い立ったのか?その理由に、とても共感しました。
答えは「あとがき」にありました。
メディアに氾濫するコトバの洪水に食傷しているうちに、思いがけず自分にとってはちょっと新鮮な発想の短い詩群が生まれた
ブログやSNSで発信をしている身としては、ちょっとドキリとさせられる言葉です。
ツイッター、フェイスブック、ブログ…を通じて、多くの人が、日々、言葉を発し、つながっている(ように見える)、現代のネット社会。
でも、「いいね」や「フォロー」し合ったりしている人たちと、果たして本当に「あたし」と「あなた」として向き合って、つながれているのか?
そう突きつけられると、はなはだ心もとなくなってしまいます。
帯に印刷された
世界中の
無数の
あたしと
世界中の
無数の
あなたは
どこにも
いない
このフレーズには、ハッとしますよね。人間関係の基本に立ち返らせる力があります。
つながっているように見えて「あたし」と「あなた」の人間関係、本当に成立しているの?と。
もちろん、ネットを通じた発信のメリットは百も承知していますし、私もその恩恵を受けながら、ビジネスをしている側面があります。
でも、その一方で、どんな時も、かけがえのない「あなた」を思い浮かべて届くように文章を書いたり、インターネットの大海を泳いでブログを見つけてくれた「あなた」と言葉を通じて真剣に向き合うことを忘れたくないな、と改めて思ったのでした。
と同時に、つながりたくてもつながれない「寂しさ」、あえてつながらない「孤独」も、引き受けていくのが「あたし」と「あなた」の関係なのだと気づく本でもあります。
特定の人物を思い描いて書いているわけではない。性別も年齢も、物語のかけらのような情景も読者が自由に、その時の気分で想像して楽しんでくれることを願っている
そう谷川さんは書いています。
人生のどこかで感じた、あるいはまさに今抱いている「感情」がまざまざと蘇り、切なくなったり、温かい気持ちになったりする。そして、今そばにいる、これから出会う「あなた」を大切にしたいと思う、そんな詩集です。
こういう気持ちを「自覚」することで、文章にも今以上に深みが出ると思いますよ(#^.^#)
ちなみに、この本は、装丁や紙にも、ものすごく凝っています。
布貼り上製本に、青・白・金の3色の箔を押したブックデザイン。伝統の高級越前和紙 を使った中身は、「この本のためだけの特別な紙」として作られたのだとか。
こんな感じのみずいろの紙です。
↓
装丁の深い青と水色。地球の「青」をイメージしたのでしょうか。手にした瞬間、「あたし」と「あなた」が世界で一つの特別な関係であることを感じさせるものとなっています。
2000円(税抜)という、120ページの本としては高めの価格設定ですが、「あたし」と「あなた」の関係を見つめ直してみたいという方は、どうぞお手にとってみて下さいね。おすすめです。
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あたしとあなた 谷川俊太郎 ナナロク社
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