2017.03.07

表現力のバリエーションを体感できる『蜜蜂と遠雷』(恩田陸)。音楽を言葉で描く1つの見本がここにある!


自分は「書くよりも、読むほうが断然好き」ということに、気づいてしまった今日この頃。読書にどっぷり浸かっております。


皮切りとなったのは、雑誌掲載の書評用にと読み始めた、こちらの直木賞受賞作。

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⇒『蜜蜂と遠雷』(恩田陸著/幻冬舎)


500ページ超の二段組の大作をほぼ2日間で読破してしまいました。これは「表現力をつけるにはどうしたらいい?」と悩む方には、ぜひ読んでもらいたいおすすめ本です!




『蜜蜂と遠雷』は簡潔に言えば、「ピアノコンクールを舞台に、才能と運命をぶつけあう青春群像小説」。個性豊かな登場人物の中の誰が、第1次から第3次予選、そして本選を勝ち抜いていくのか。これがメインストーリーとなっています。


ピアノを持たないにもかかわらず予選を突破した謎の少年、天才少女としてCDデビューしながら突然ピアノが弾けなくなくなった伝説のピアニスト、音大を出てからサラリーマンとなり最後のコンクールと決めて出場する男性、名門ジュリアード音楽院在籍の完璧な「ピアノ王子」的存在…。


この人物設定を聞いただけでも、「面白そう♪」とワクワクしませんか?


でも、この小説の凄さは、ドラマティックな群像劇というストーリーテリングの巧さだけではありません。主な登場人物がコンテストで弾く数々の曲、その「音楽」を文章だけで見事に描ききったところこそ、類を見ない挑戦であったのです。


直木賞受賞の理由も、ここにありました。選考委員の言葉からも、それがうかがえます。

「言葉が圧倒的であった。(略)音楽を小説で表現するのは至難であろうが、言葉の洪水の中でそれがなし得ているというのは、新鮮な驚きでもあった。(略)私は、新しい表現とむかい合っているという、刺激的なものを感じながら、読了した」(北方謙三)


「音楽を文章で表現するのは難しいが、作者はありとあらゆる手を使い、いたるところから言葉をかき集め、その素晴らしさを伝えようとしている(略)これからの数の音楽や演奏の模様を、丹念に描写した粘り強さには頭が下がる」(東野圭吾)


「ピアノコンテストが主題であるから、複数のピアニストがそれぞれ複数の曲を弾く。しかし同じ描写がまるでないのである。これは本当にすごいことだ。ピアニスト個人と弾く曲の個性がくっきりと現れている」(林真理子)


上記のように、プロの人気作家に大絶賛されているのです。だからと言って、テクニックが鼻につくというタイプの文章ではありません。曲調に合わせて、グイグイ引き込まれたり、スピードを落として味わったりと、気持ちよく身をゆだねながら読むことができます。


何がスゴいって、コンテストでは予選を勝ち抜くまでに何曲も弾くことになるんですね。しかも、一人一人選曲も違う。それを、登場人物の個性とスキルに合わせプログラミングし、描き分けた力量。音楽的知識も相当です。


林真理子さんの言うように、同じ表現は二回と出てきません(…と思います。なにせ、既視感なくページを繰ることができましたから)。


作者の恩田陸さんも、そこは、いちばん気を遣い、かつ苦しんだ部分だと言っています。「遅筆」ということもあるようですが、14年かけて完成した超大作だとか!(驚)


短いブログ記事でも、同じ表現を三度四度と繰り返して書いてしまう人も多いもの。ブログ記事くらいの短さなら、「重複表現」を自分で見返して書き換えることは十分可能。(それくらいはチェックしましょうね)


でも、500ページを超える本で、同じ表現をしないというのは、自分の中でしっかり「記憶」しないと無理です。それくらい、表現にこだわっていることの証明でもあります。

「音」を「言葉」で表す挑戦。「個性」を「音」に載せて、さらに「言葉」に変換する華麗なテクニック。


本当に魅了されます。林真理子さんは「小説の中に出てくる曲を聴きたくなり、CD棚の中を探した」とも選評に書いていますが、その気持ちわかります。音楽に明るくない私も、クラッシク曲を聴いてみたくなりました。それくらい魅力的な「音のシャワー」ならぬ「言葉のシャワー」に浸れるのです。


「そんなプロの文章を読んだら凹んじゃうかも…」なんて思わず、どうぞ手に取ってご自身の目で確認してください。


「こんな素敵な表現法があるんだ」と目を見開かれる思いがするはずです。何も考えず、良質な文章に触れて浸ること。その体験の蓄積こそ、あなたの表現力を培っていくはずです。


ちなみに、『蜜蜂と遠雷』は、コンテストを裏で支える調律師やコンサートマスター、審査員といった「大人が紡ぐサイドストーリー」も読みどころ。そんなこともあって、昨年から積ん読になっていた、こちらの本も続けて読破しました。


調律師が主人公の物語です。

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⇒『羊と鋼の森』(宮下奈都/文藝春秋)



恩田作品の華やかさとは違った、静謐な世界が広がる作品。「音の世界」の表し方にも、いろいろあるのだなと発見がありますよ。実用書に限らず、小説も似たようなジャンル、作者を固め読みすると、一気に読めちゃいます。読書継続のコツですね(笑)

それと冒頭の「書くよりも読むほうが好き」というのは、恩田陸さんもインタビューでおっしゃっていた言葉です。でも、だからこそ「自分が読んで、がっかりしない程度の文章は書かなくちゃと思う」ともおっしゃっていました。

確かに!読む目が磨かれていくほど、書く力も磨かれていくというのは、こういう心理作用が無意識に働くからなのかもしれませんね。

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この記事へのコメント
今晩は ランキングから来ました。

老眼になってから文字を読むのが苦になって
あまり新聞さえも読まなくなりましたが、音楽を文章で表現する どうやって表現しているのか興味が涌きました。

アマゾンで購入してみます(*^▽^*)
Posted by アイリス at 2017.03.07 20:03
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